灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

こえてゆけそこを…

長い長い列は
丘の向こうへと
続いていた

列に並ぶ人達は
皆目隠しをして
腕には注射痕があった

呼びかけても
誰も反応しない
幾重ものマトリックス
雁字搦めにされ
前の人の肩に手を置いて
ぞろぞろと進んで行く

列を取り囲む
パリサイビト達は
方手に墨俣
片手にメガホンを持って
進め!進め!と
呪文のように
言葉を投げかける
自らの不安を打ち消す為にも
そのマントラは止むことはない

ノロノロと動く列の先端は
遥か岬の先端の崖に続いていて
絶え間なく人々が
荒れ狂う波間に
呑み込まれてゆく…



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この光景を
目に焼き付けておこう
生き延びた者達の為に
あるものは手を合わせ
あるものは
静かに十字をきった

新しい時代の代償は
いつも途轍もなく重い
それでも進むしかないのだ
身も心も血塗れになりながら
生き延びた者の使命を果す為に


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