灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

2009-01-01から1年間の記事一覧

中央線上の猫

早朝の国道のど真ん中に その猫はいた 中央線上に 潰れた下半身を 横たえ 捻れた上半身を起こして 行きかう車を シャーシャーと 威嚇していた 折しも朝のラッシュが 始まる頃で 行きかう車は 数を増しスピードを増し 誰も止れる状況ではなかった 気付いたも…

衝動

今こそしなければという強い思いが 心を突き上げてくることがある この果てしなく続く列の先が おぼろげながら見えた時 切実だが難解な問題の本質が 束の間心をよぎってゆく そんな時私はこぶしを握る そしてタメ息をつく でもすぐに私は 怠惰の羽毛に包まれ…

傾いている

地球の地軸は23.4度傾いている そのおかげで秋の後には冬がやってくる もう街には木枯らしが吹き始めている ボクの背骨も幾らか右に傾いている ボクが不安定なのは 地球に四季があるようなものだ 地軸が傾いてなければ 面白みのない惑星だっただろう それで…

端末

したたかな欲望が 思いあがった理性を いつの間にか感化して 網の目はほぼ支配を完了した 街からのら犬は姿を消した 暴走族も姿を消した 次は野良猫の番だ その次はホームレス・老人・病人・障害者… みんな少しずつ無理をしている みんな静かに病んでいる 絶…

処世

勝ち続ける者は永遠に勝ち続ける あたかもそれが与えられた役割であるかのように オマエにはおこぼれはない びた一文…ない 諦めて石の下でひっそりと暮らせ そういってあいつが笑った 目に見えない網が張り巡らされている 降ってわいた幸運等は…ない 動きの…

現状

絶え間なく降り注ぐ 情報という名の 矢に煽られ 足元に広がる 蜜に足を取られ 皆逃げる事に 倦んでいた 目まぐるしく変わる気配の中で 皆どこか尋常ではなかった その事をうっすらと 感じていたから 真っ当に生きる者を 蔑み笑い者にした 何かをする前に 出…

阿修羅

阿修羅の呟きが聞こえてくる 夥しいリンクとクロス 傍らに懸命に 今を盛りと生きる者たちがいて こんなチッポケなあなたも 愚痴ることなく 安らかに生を終える事が出来る これは有り難い事だ 独りで生まれ独りで逝くのだけれど 目に見えない数えきれない線で…

列に並ぶ

列に並ぶ 臆病者は列に並ぶ 我慢して列に並ぶ いい明日を手に入れるため 今を捨てて列に並ぶ 明日になれば また列に並ぶ 心の底では 皆イライラしてる ストレス ストレス 列に並ばないものは 許せない 違う生き方は認めたくない 自由を謳歌する事を 許す事は…

今日からボクは no7

夏休みになった 黒さんはボクに「あとは頼むよ!」と言い残して支店へ移っていった メインの給食の配達がなくなって 仕事の内容は激変した 第一朝早く起きなくてよくなった八時までに出勤すればいいのだ 仕事といえば病院と飲食店の配達くらい 面喰ってるボ…

風土

おまえを守ってくれた巣 その温もりを思い出すだろう おまえだけの物語は かけがえのない 誰にも理解できない物語だ おまえが今守っている巣 その中でおまえの愛する者達の 物語が紡がれる そうやって我々は 地と血に纏わる物語に 心を染めて生きながらえて…

奇跡

奇跡 いまここにある事の 奇跡 何億というスペルマの競争に勝ち 幾多の障害を乗り越え Ovumとめぐりあい 生まれる 命 奇跡 いまここにある事の 奇跡 原初の生命体から 果てしない時を越えて 途切れる事なく 受け継がれた 命 奇跡 いま生きている事の 奇跡 60…

冷たい夏

太陽を月が食べた夏 瀕死の太陽は雲の中で安静にしている 大地には雨が降りそそぎ 山は崩れ 川は氾濫した 暑い夏はどこに行った エアコンとビールで凌ぐ あの茹だる様な暑さは どこに行ったのだ 夏祭りの神輿も 花火大会も冴えないまま 水着を着る事もなく …

天気図

皆既日蝕の日 ボクはトカゲと和解した 夕暮れはもうそこまで迫っていた 薄汚れた陣羽織の襟を立て 両切りタバコに火を付けた 煙の中に浮かんだ過去は 興業に失敗したシネマの早回しのように 奇妙なストロークで消失した たとえ君がボクのシナプスを 巧妙に繋…

カクテル

どう待ち伏せをするかを 私とブブカ族の軍師は話し合った 約束の時を過ぎても 川は流れ続けていた 薬局で貰った薬 その裏面の注意事項に 書かれていたのだ ゲームに参加するのは自由ですが 誰かの賞賛を期待してはいけません ここにはセンチメンタルなナルシ…

暖かな居間で アタイは夢を見る 悲しい事に 人間たちは みな少し歪んでいる そしてみな棘を持っている そしてその事で 苦しんでみたりもする 犬のアタイは 両親の顔さえ知らない ただその日その日を 素直に生きる それ以外の術はない 考える脳もない 物をも…

はかり

この世とあの世を隔てる川 その川の向こうには案内所があって そこには一台のはかりが置かれている 川を渡ってきた人は誰もが素裸で口もきけないから 一人ずつ網羅に手をひかれてそのはかりにのる そのはかりはあなたの魂の重さを量るのだ どんなにごまかし…

今日からボクは 6

持って帰った野菜は暑さに弱い物はすぐに冷蔵庫に入れる 荷台の上の野菜をその日の仕分け表に従ってそれぞれの学校ごとにパレットの上に分けてゆく 学校はそれぞれ生徒の人数が違う 多いところでは1000名を超えるし 少ないところでは200名に満たない…

祭りの後

この街に生まれ育ったボクは 周辺に漂う侘しい鄙びた雰囲気を感じ取っていた それは斜陽へ向かう製鉄所の年老いてゆく男の悲哀とも違う 此の頃やっとその侘しさの正体が分かりかけてきた それはこのあたり一帯を一世風靡した黒ダイヤ帝国の名残だったのだ 地…

今日からボクは 5

考えてみればこの会社も変わっている 従業員は5人なのか7人なのか定かでない。というのはそのほとんどが兼業しているのだ 年老いた女社長にしてからが本業のほかに夜は手料理を出す 居酒屋を経営してる クータと呼ばれる賑やかなおじさんは他人の家に出来…

一番好きなビデオです(マイケルへの追悼)

Michael Jackson-In the closet

今日からボクは 4

ぼくの仕事というのは一口でいえば野菜の仕分けと配達という事になる 毎朝ひと月1万円で借りたおんぼろアパートを5時半におんぼろ自転車に乗って出発する 会社までは20分5キロほどの距離だ 会社に着くと隣町の青果市場に出発する前にやっておかなければ…

今日からボクは 3

世の中には不思議なことが沢山ある たとえばボクの上司である黒さんの事だ ひと月間接してみて彼はボクがこれまであった誰よりもインテリジェンスに富んでいると思うようになった 黒さんはどちらかといえば無口なほうである 話す必要がない時は黙っている け…

血塗れの夜

いくつかの危険な因子を 内包したまま ボク等は出逢う 皮膚を突き破って その存在を露わにする因子もあるが 大部分は皮脂の下に 潜在意識の深い闇の中に 佇んでいて 本人でさえその存在に気付いていない けれども苦しい状況に追い込まれると それらは牙を剝…

今日からボクは 2

失職してホームレスとなって施設のお世話になってボクの中で変わったものがある それは生き方根本に関する変化だった それまでのボクは働く事に毎日毎日働ける事に感謝などしてなかった。 いかに人より楽をして金を沢山もらうかその事に尽きた だが突然解雇…

今日からボクは(しらふでシュラフの続編)

今日 ボクの新しい仕事が始まった ボクはくたびれた中年であるけれども生きてゆかねばならない いつまでも行政に甘えてはいられないのだ どんな仕事でもよかったのだ けれどもこの不況ではどんな仕事もなかったのだ 年が明けてからの職探しの日々 焦りと苛立…

誕生祭

焼けたアスファルトの上に イグニションコードの切れ端が 蛇の死骸のように 打ち捨てられている 明日は私の誕生日 何という明るい日差しだろう 妻の検査結果に異常はなかった 安堵の気持ちはじわりと体をぬけ ありふれた日常がまた始まる カーテンは開かれな…

寓話

物語は消滅しえげつない空気が蔓延した 息苦しくなってきたので 人々はウサギの目を持った兎を探した 本物の兎を捧げなれば祭壇が整わないのだ そして物語もはじまらない それにしても どこもかしこも奇怪な輩ばかりだった 狐の目を持った兎や 狼の目を持っ…

しかも尚

繰り返される摩擦と刺激の中で 社会はオルガスムスを熱望している ディケンズは静かに帯を解く されど問題は陰核の位置なのだ 正確な情報は尚 ライオンキングの咆哮のように 空しく宙を舞う あたり触りのない言葉で 愛想笑いを浮かべる君 昔から君はそうだっ…

次第に追い詰められてゆく

ボクはいつものように 御託を並べて いい訳をしていた そんな事がいつまでも続かない事を 一番よく知っているのは 他でもないボク自身だった ボクが恰好を付けて 足踏みしたり 後戻ったりしてる間に なりふりかまわぬ輩が どんどん追い越して行った 厄介な荷…

らくさ

飯を喰わなくて生きられるなら らくさ でも美味しいものを食べる喜びもなくなるしね 苦しい事の裏側には楽しい事がびっしり張り付いてる だから本当の楽しいには苦しいの裏打ちが必要さ たとえば欲望を開放する前と後の らくさ 冷静な男というのはエストロゲ…