灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

今日からボクは no7

夏休みになった
黒さんはボクに「あとは頼むよ!」と言い残して支店へ移っていった
メインの給食の配達がなくなって 仕事の内容は激変した
第一朝早く起きなくてよくなった八時までに出勤すればいいのだ
仕事といえば病院と飲食店の配達くらい 面喰ってるボクに紀幸さんは言った
「日頃ハードなんだから ゆっくり体を休めてね トータルでバランス取れてるんだから」そういって笑った
夏休みになったのを見透かしたようにj狭い事務所の中は午前中から次々と人がやってきた
それは銀行の人だったり 保険屋さんだったり 紀幸さんの友達だったりした
ボクの仕事は大抵昼過ぎには終わったので あとはのんびり機械の整備や作業場の片づけをした
休みになって黒さんがいなくなって多くの事に気がついた
この会社の配達先には病院や食堂がある そういう所には休みの日にも配達があったのだ
その事に気付かなかったのは迂闊だった
黒さんがいなくなった以上それらの仕事は当然ボクに廻って来た
「いったい黒さんはいつ休んでいたんですか?」驚いて叫ぶボクに紀幸さんは涼しい顔をしていった
「そうだわねえ~もうかれこれ7~8年は働きっぱなしじゃないの」
「そんなばなな!」ボクは一瞬眩暈に襲われた それは自分に降りかかった苦難に対してでなく 黒さんに対してだ あの黒さんが涼しい顔して7年間も休まずに働き続けていたのか!というある種のため息にも似た驚嘆の思いが胸を突きあげたのだ