灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

#小説

魔虜屈巣;真取薬:

ボンヤリとした視界の中に、白いカバーのようなものが、ゆっくりと動いてゆくような感じがした。 私はベッドの上に寝かされていた。 目覚めたようだ 誰かの声がする 天井全体が巨大なスクリーンになっていて何人かの人影が私を覗き込んでいる、 全ての機能は…

随分昔に書いた短編

サーリャ爺さんの逝く日 青々とよく晴れた日でした。 サーリャ爺さんはいつもの時間に目を覚ましました。 ヤギのミルクを入れたチャイを片手に家の外に出ました。 見渡す限り青々とした麦畑が広がっています。 傍らで犬のポコポコが尾っぽをふって挨拶します…

暗闇の向こう

君の言ってる事は判る 私もこの戦争は長くは続かないと思っている。 落盤で出来た暗闇の中で中佐はゆっくりと話し始めた。 ふう・・ボクはこう見えても立教ボーイだからね・・ふふ どこかを怪我したのか話の途中にうめき声が混ざる。 だからと言って何が出来…

F町に一生懸命ゴミを拾う犬がいた。 雨の日も風の日も毎日町に落ちているゴミを口に咥えて拾い続けた。 町の人達はゴミ拾い犬と呼び なかなか感心な犬だと皆で褒め称えた。 ところで M町に反対にゴミを散らかす犬がいた どこかからゴミを咥えてきてはポイ…

お隣さんは異星人

その1 今日 隣の家の主人が挨拶にきた。 しばらく家を空けますんで、 留守中いろいろと御迷惑をお掛けすると思いますがどうか宜しく ゴミ当番と回覧板は飛ばしてもらうよう組長さんには話しています ほうほうわかりました で どちらへ? 久々に里帰りをしよ…

二兎流 13

函館11R 1-5-9 1→9→5 福島11R 8-13-15 6-4-15 中京11R 1-3-7 10-12-16 以上各馬健闘を祈る

王様と姫君

王様!大変です 姫君が彼氏を連れてもどられました 喜ばしい事ではないか それがその彼氏と言うのが少し問題が・・・ なんだね 驚かないから云いなさい はいあの姫君のお相手はかなり年上で・・・ それぐらいどうしたというのだ 娘が選んだその相手を私は喜…

奇遇だね@@てん

天満町を過ぎたあたりから 猫の勢いが酷くなった ギャンギャン鳴きながら降って来る スイスイと避けながら なんとか甘もんやに辿り着いた 重い鉛の扉を押して入ると 寅さんによく似た若い女店員が イラハイマセ と頭を下げる ショーケースを見ると 目当ての…

桃太郎と鬼

皆さんを成敗するために来ました 島に上陸してから桃太郎は大きな声でそう言った 鬼が島の住人達は驚いて振り返った そして笑った 成敗を口にするにはあまりにもひ弱で育ちのよさそうな少年が キジと犬と猿のぬいぐるみを背中に結び付けて立っていたから 鬼…

瞬間が分かれ道

分かれ道で迷ったら、自分はやがて死ぬ身であると思い起こせ! そう言ったのはジョブズだ 世間体や見栄や他人の思惑を気にすることなく心の声を聞けと言う 分かれ道はこの瞬間にもある 何を選びどう進むかは全て分かれ道だ そんなに長生きしたとは思わないが…

調合

少し苦しみのスパイスが足りないようだから、加えたよ 夢の中で白衣の男からそう言われた様な気がする…。 あれは神だろうか・・・・それとも私の心の妄想の産物だろうか 広い荒野を誰もが独りで歩いている 行く宛などない ただ力尽きるまで歩くだけだ 考えて…

いのしし

土曜日の午後だった。 郁夫は仕事で車を走らせていた。 城山トンネルの手前で前を走る車が次々に減速するのに気付いた。 センターラインの際に落下物でもあるのか・・・ 視界が開けて、それが横たわった獣である事がわかった。 左にハンドルを切って通過する…

髭のないサンタ

源蔵はディスカウントショップの通路を歩いていた。 夕暮れ時 外は時雨ていて広い店内は閑散としていた。 源蔵が来たのは十年来使っているテレビの調子が悪く 掘り出し物でもあればこの際買い換えようかと思ったからだった。 もう何年も独り暮らしの源蔵には…

何が欲しいのだろう

一体自分は何が欲しいのだろう? 洋造は川面に映る自分自身の影に問いかけてみる 金か? 人の羨む肩書きか? どちらかと言えば金だろう では何故金が欲しいのか 洋造はてくてく歩きながら考えてみる 楽がしたいのか 否 贅沢がしたいのか 否 では何故金が欲し…

町内会

次にケニファー星よりの友好使節の歓待の件を話しあいたいと思います。 此の件は我々町内会が所有するエニキット第三惑星の開発の問題とも絡んでおりますので、第4組の組長さんから 詳しい説明をお願いします。 中略 最後に会計より収支報告があります。 本…

too late or early

我々は月の裏側で未知の物体を発見したとNASAの報道官は興奮気味に捲し立てた。 送られてきた映像を見ると巨大な長方形の石板の様な物が月面に斜めに突き刺さっているのが分かる。 早速 国連の主導で国際調査隊が編成された。 各種の訓練の終え、5年後には宇…

ギィ~ あの日奇妙な音に私は思わずあたりを見回した。 犬と散歩中の私が排泄物を片付けようと公園の植え込みの中にしゃがみこんだ時だった。 そこは大きな自然公園で奥には火葬場が隣接してあり横は入り江に隣接していた。 大きな楠の木の向こうに視点が張…

呻き

ヒリヒリと喉の奥に漠然とした恐怖あり 背には突き立つ数本の見えない矢 腹部にはゆっくりと血を吸う蛭一匹 よく見れば道は所々崩れて奈落の底が口を開けている 皆 必死で逃げている 皆が逃げてゆく その先は暗闇で 悲鳴だけが木霊する 漠然とした恐怖あり …

老人ジェット ある臆病者の系譜

石楠花の咲き乱れる犬ケ岳の頂上付近で二人の白骨遺体が発見されたという小さな囲み記事を目にした時、塔堂心亮はまだ二十代の半ばで、毎日がちんけなM1グランプリのステージに立っているかのように慌ただしく過ぎていってた。 未熟な自分を抱えての新婚生…

事の重大性

だから何度も申し上げていますように、甚だ勝手ではございますが、この度の案件は閣議での決定により国の管轄に入りました。 それもこれもあなたの発明があまりにも素晴らし過ぎて、国家安全保障の点に於いて、それをそのまま公にする事で国の被る不利益が甚…

木から降りた猿

R氏は木の上に暮らす猿だった。 彼の母も父も祖父も祖母も…もう気の遠くなる様な昔から、そんな生活を続けていた。 ところが最近雨がめっきり少なくなって、森の木が年を追うごとに少なくなっていった。 困ったことになったと漠然と思ってはいたのだが、群…

no11  黒い服の.男

橋の欄干に凭れて黒い服を着た男がこちらを見ている。 全てが現実の風景でないような気がしてS氏はああまたあいつだと思った 無視して通り過ぎる時苦笑いをして言葉を投げてきた。 一体いつまで待たせる気なんだ しょうもないものばかり書きやがって え 一体…

no9 よくあること

N氏の会社の敷地の中にドラム缶が置いてある。 大家である建設会社の端材を処分する焼却炉だ。 でももっぱら最近はN氏が使っている。 N氏の会社で出る段ボールや紙くずを早朝の早い時間に燃やす。 ここは工場団地なので朝の時間には方々の敷地から焼却炉の…

no8  ランダムな人生

D氏は今一つの映画を観終わった なかなかいい映画だったので誰も席を立とうとしない D氏はシートに凭れたまま人生について考えてみる 戦争は多くの人々の人生を取り返しのつかぬ程狂わせたのだろう その余韻の残ったまま家に帰り録画していた大河ドラマのn…

no7 面倒くさがりな神

http://img02.naturum.ne.jp/usr/stepper/%E6%B2%B3%E5%86%85%E5%B7%9D%E3%81%B5%E3%82%8C%E3%81%82%E3%81%84%E3%83%93%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B82007%20%E3%83%88%E3%82%A4%E3%83%AC%EF%BC%91.jpg 君はトイレに入る時に考えた事があるかね どの便器で用を…

no6 それぞれの旅立ち

いい事も悪い事も彼に絡みつく全ての縛りから解き放たれ 今朝もまた一人 白いベットから旅立った 愛すべきものに見送られ 憎み合った者に溜息を吐かせ 彼の歴史は閉じた いい人生だったかい? さあどうだかね まあこんなもんじゃねぇのかい 霊安室の厳かなる…

no5 辺境にて

http://www.sorae.jp/newsimg10/0219andromeda.jpg ここからは地球は見えない この惑星がどこにあるのかも皆目見当がつかない 十代の半ばに攫われてこの監視台(我々は檻と呼んでいる)でずっと捉われているのだ どの位時が流れたのだろうそれは今の私には皆…

no4 初夢

あれはもう十年くらい前の事。 正月2日の夜に見る夢を初夢と言うが、その年N氏は海辺に近い松の生い茂る小山を掘ると、ザクザクとお金が出てきた夢を見た事があった。 これから始まる一年がどんな素敵なハプニングが待ち受けているのか、N氏はワクワクしなが…

no3 神

ある日黒い鞄を下げた神が訪ねてきた。 カバンの中からアイパットを取り出すと、見事な手さばきで集計を始めた。 えーと総計770円でんな な なんの事ですか? あんたが生まれてから此の方神様にあげたお賽銭の総額ですがな そういうと頭の禿げた神はへへへと…

no2

それから1時間くらい一基一基 丹念に墓標を調べて廻った。 R氏はどうしてもその墓を見つけたかった。 おぼろげな記憶を頼りに陽が西の空に傾いた頃 漸くその墓を見つけた。 ちっぽけな古びた墓だったが、向き合って立つと往時の光景が目の当たりに浮かんで…