灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

随分昔に書いた短編




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サーリャ爺さんの逝く日

青々とよく晴れた日でした。
サーリャ爺さんはいつもの時間に目を覚ましました。
ヤギのミルクを入れたチャイを片手に家の外に出ました。

見渡す限り青々とした麦畑が広がっています。
傍らで犬のポコポコが尾っぽをふって挨拶します。
ああ ~~~ヾ(^∇^)おはよー♪ よく晴れたいい日だべ

背を屈めスタスタと歩いてゆくと出会う皆が笑顔で話しかけます。
ああ~おはよう おはよさんでがんした
ミノミノさぼらんで働かにゃ今年の雪は深いぞ
セレンタイおぬしの畑は見事じゃな!ホレボレするぞい
ボツコイぬしんとこの味噌ばばあは元気かいちっともみらんが
元気でやってるよ

おおギギマルよいところで会ったは
あとで皆に村はずれの広場に来るよう言うとくれ
何かごようでがんすか?
あいやなに この天気がええけなあ
わしぁ今日逝こうと思うとるんよ へへへ
それはええ考えでがんすなあ
後で寄らしてもらいますわ

村をひとまわりすると昼近くなりました。
それにしてもよく晴れたいい日じゃの ふふふ
わしが逝くにはよい日よりじゃ

午後になって昼餉を済ませた村人たちが
三々五々村はずれの広場に集まってきました。

皆ニコニコ笑っています

大きな石に腰掛けたサーリア爺さんの前に
思い思いの食べ物や飾りを置いて笑顔で会釈して輪の中に戻ってゆきます。
オウありがとうよ!ミーヤン コバクもすまんの ハハハ

大体皆が集まった所でサーリャ爺さんは腰を上げました
ニコニコ笑って皆を見廻すと軽く片手をあげました。

背後では力自慢の若者たちが
大きな石の扉をゴロゴロと動かして人ひとりが入れる隙間を作りました。

そんじゃの 世話になったの ハハハ
サーリャ爺さんはスタスタと歩くと
鼻歌を歌いながら中へ入っていきました。
サーリャ爺さんが入ると分厚い石の扉は閉じられ、
その気配は消えました

村人たちはそれぞれの仕事に戻っていきました。

中には鼻歌を歌う者もいました。

抜けるような空の天気のいい日でした。




作者注  

25歳の頃ダサイズムという同人誌を発行していました
其のころに書いた作品を思い出して書いてみました
オリジナルは失われて当時のタッチとは違いますが
今書き直すとこのような作品になりました。