灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

ショートショート

あらしのあと

施設長 皆さんの頑張りに感謝します。 新型コロナの脅威もどうやら過ぎ去った模様です。 職員A いゃ〜大変でしたね ほどなく緊急事態宣言も解除されるでしょう 職員B この汚染地域の真っ只中で感染者3死者1は誇るべき数字ですよ 施設長 入所者の皆さんもさぞ…

お薦めのオプション

ある商店の応接室で私は店主を相手にもうかれこれ1時間近く商談に臨んでいた。 新しく買う商品の品番や性能や価格など話し合っていたのだ。 大体の商談は終わり、出されたコーヒーを一口すすったとき、おもむろに店主が切り出した。 ところでオプションの方…

物語は終わらない

其の鶴のように痩せた男は、 火葬場の窯の扉を開けて、 棺の載ったストレッチャーの横に立ち皆に向かって一礼した。 そして鶴のように甲高い声で話し始めた。 これより故人は皆さまとお別れして遠い世界へ旅立たれます。 そこまで言うとコホンと咳ばらいを一…

随分昔に書いた短編

サーリャ爺さんの逝く日 青々とよく晴れた日でした。 サーリャ爺さんはいつもの時間に目を覚ましました。 ヤギのミルクを入れたチャイを片手に家の外に出ました。 見渡す限り青々とした麦畑が広がっています。 傍らで犬のポコポコが尾っぽをふって挨拶します…

イブ

一週間前から続いた陽気はイブの前日になるとジェットコースターのように下降して急激に街は冷え込んだ。それでも今日はイブ!町のなかにはジングルベルやラストクリスマスが流れ聖夜の気分を盛上げている。 彼氏や家族の待つ同僚達は、もう幾日も前からこの…

それからのモモ 2

リコねぇがつれてってくれたのは虹の橋の広場 そこにはたくさんのわんこがいて お友達もできたヨ お楽しみはよるの じょうえいかい 今日やっとボクの番が来た ワクワクドキドキ おかあちゃ~ん おとううちゃ~ん おいちゃんも みんなまいにちまいにち 泣いて…

それからのモモ

みたこともないせかい おくへすすむしかない おかあちゃ~ん いぶのひにりこねちゃんがむかえにきた ちょううれしい~ にじのはしまでつれてってくれるって ほっ‼

Reunion(再会)

ある日 町の片隅にある老人ホームに一人の青年が訪ねてきました。 園長の前に座ると青年は静かに笑っています。 ーこんな立派な経歴なのに、こんなうらぶれたホームで働きたいとは君は変わってるね 桃野吉太郎 履歴書に目を通した園長は目の前の青年を値踏み…

昨年の今頃池には数えきれない魚がいた 30cm位のヒブナが6匹とを頭にヒブナとフナ金魚とランチュウとグッピーとうじゃうじゃ泳いでいた 鳥に食べられたり大雨に流されたり、寒さにやられたり 1年の間に色々なことがあって 春先には小さな魚が7匹にまで減った。 そ…

鉄の都

見守ってくれる人が居なくなってから人生が始まる 貴方は貴方のやり方で行けるとこまで行く もう愚痴を聞いてくれる人も 抱きしめてくれる人もいない 私は私のやり方で行けるとこまで行く 野垂れ死ぬのは皆同じ だとしても せめて自分らしい死に場所で 穏や…

わなわな

そしてあなたは罠に嵌る それは自分の作り上げた罠だ どうあがいても逃げられまい ただ一つ逃れる術があるとすれば あなた自身が変わる事だ 青虫が蝶になるように ヤゴがトンボになるように 自らの軛を逃れて化体すれば 容易にそこを抜け出せる 新しい世界で…

暗闇の向こう

君の言ってる事は判る 私もこの戦争は長くは続かないと思っている。 落盤で出来た暗闇の中で中佐はゆっくりと話し始めた。 ふう・・ボクはこう見えても立教ボーイだからね・・ふふ どこかを怪我したのか話の途中にうめき声が混ざる。 だからと言って何が出来…

F町に一生懸命ゴミを拾う犬がいた。 雨の日も風の日も毎日町に落ちているゴミを口に咥えて拾い続けた。 町の人達はゴミ拾い犬と呼び なかなか感心な犬だと皆で褒め称えた。 ところで M町に反対にゴミを散らかす犬がいた どこかからゴミを咥えてきてはポイ…

お隣さんは異星人

その1 今日 隣の家の主人が挨拶にきた。 しばらく家を空けますんで、 留守中いろいろと御迷惑をお掛けすると思いますがどうか宜しく ゴミ当番と回覧板は飛ばしてもらうよう組長さんには話しています ほうほうわかりました で どちらへ? 久々に里帰りをしよ…

二兎流 13

函館11R 1-5-9 1→9→5 福島11R 8-13-15 6-4-15 中京11R 1-3-7 10-12-16 以上各馬健闘を祈る

王様と姫君

王様!大変です 姫君が彼氏を連れてもどられました 喜ばしい事ではないか それがその彼氏と言うのが少し問題が・・・ なんだね 驚かないから云いなさい はいあの姫君のお相手はかなり年上で・・・ それぐらいどうしたというのだ 娘が選んだその相手を私は喜…

奇遇だね@@てん

天満町を過ぎたあたりから 猫の勢いが酷くなった ギャンギャン鳴きながら降って来る スイスイと避けながら なんとか甘もんやに辿り着いた 重い鉛の扉を押して入ると 寅さんによく似た若い女店員が イラハイマセ と頭を下げる ショーケースを見ると 目当ての…

桃太郎と鬼

皆さんを成敗するために来ました 島に上陸してから桃太郎は大きな声でそう言った 鬼が島の住人達は驚いて振り返った そして笑った 成敗を口にするにはあまりにもひ弱で育ちのよさそうな少年が キジと犬と猿のぬいぐるみを背中に結び付けて立っていたから 鬼…

瞬間が分かれ道

分かれ道で迷ったら、自分はやがて死ぬ身であると思い起こせ! そう言ったのはジョブズだ 世間体や見栄や他人の思惑を気にすることなく心の声を聞けと言う 分かれ道はこの瞬間にもある 何を選びどう進むかは全て分かれ道だ そんなに長生きしたとは思わないが…

調合

少し苦しみのスパイスが足りないようだから、加えたよ 夢の中で白衣の男からそう言われた様な気がする…。 あれは神だろうか・・・・それとも私の心の妄想の産物だろうか 広い荒野を誰もが独りで歩いている 行く宛などない ただ力尽きるまで歩くだけだ 考えて…

いのしし

土曜日の午後だった。 郁夫は仕事で車を走らせていた。 城山トンネルの手前で前を走る車が次々に減速するのに気付いた。 センターラインの際に落下物でもあるのか・・・ 視界が開けて、それが横たわった獣である事がわかった。 左にハンドルを切って通過する…

髭のないサンタ

源蔵はディスカウントショップの通路を歩いていた。 夕暮れ時 外は時雨ていて広い店内は閑散としていた。 源蔵が来たのは十年来使っているテレビの調子が悪く 掘り出し物でもあればこの際買い換えようかと思ったからだった。 もう何年も独り暮らしの源蔵には…

何が欲しいのだろう

一体自分は何が欲しいのだろう? 洋造は川面に映る自分自身の影に問いかけてみる 金か? 人の羨む肩書きか? どちらかと言えば金だろう では何故金が欲しいのか 洋造はてくてく歩きながら考えてみる 楽がしたいのか 否 贅沢がしたいのか 否 では何故金が欲し…

町内会

次にケニファー星よりの友好使節の歓待の件を話しあいたいと思います。 此の件は我々町内会が所有するエニキット第三惑星の開発の問題とも絡んでおりますので、第4組の組長さんから 詳しい説明をお願いします。 中略 最後に会計より収支報告があります。 本…

too late or early

我々は月の裏側で未知の物体を発見したとNASAの報道官は興奮気味に捲し立てた。 送られてきた映像を見ると巨大な長方形の石板の様な物が月面に斜めに突き刺さっているのが分かる。 早速 国連の主導で国際調査隊が編成された。 各種の訓練の終え、5年後には宇…

ギィ~ あの日奇妙な音に私は思わずあたりを見回した。 犬と散歩中の私が排泄物を片付けようと公園の植え込みの中にしゃがみこんだ時だった。 そこは大きな自然公園で奥には火葬場が隣接してあり横は入り江に隣接していた。 大きな楠の木の向こうに視点が張…

事の重大性

だから何度も申し上げていますように、甚だ勝手ではございますが、この度の案件は閣議での決定により国の管轄に入りました。 それもこれもあなたの発明があまりにも素晴らし過ぎて、国家安全保障の点に於いて、それをそのまま公にする事で国の被る不利益が甚…

木から降りた猿

R氏は木の上に暮らす猿だった。 彼の母も父も祖父も祖母も…もう気の遠くなる様な昔から、そんな生活を続けていた。 ところが最近雨がめっきり少なくなって、森の木が年を追うごとに少なくなっていった。 困ったことになったと漠然と思ってはいたのだが、群…

no11  黒い服の.男

橋の欄干に凭れて黒い服を着た男がこちらを見ている。 全てが現実の風景でないような気がしてS氏はああまたあいつだと思った 無視して通り過ぎる時苦笑いをして言葉を投げてきた。 一体いつまで待たせる気なんだ しょうもないものばかり書きやがって え 一体…

no10 夢の続き

スーザンは所謂(いわゆる)男好きのする女で、自転車の後ろに乗せて松江を出発したものの福岡までの道のりのありとあらゆる所で見知らぬ男がちょっかいを出してくる。 それは若い学生だったり、土方の親父だったりよくもまあこんなに揃いもそろってと言いた…