灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

あらしのあと

施設長 皆さんの頑張りに感謝します。

新型コロナの脅威もどうやら過ぎ去った模様です。

職員A     いゃ〜大変でしたね ほどなく緊急事態宣言も解除されるでしょう

職員B     この汚染地域の真っ只中で感染者3死者1は誇るべき数字ですよ

施設長 入所者の皆さんもさぞや喜んでいらしゃるでしょう 今日から家族の面会も許可された事だし

ヘルパーA  はい…でもあのう  皆さん何だか浮かない顔していらしゃいます

ヘルパーB   そうなんですよね、ため息ばかりついて ろくに食事も摂らないんですよ

受付A    そういえば面会に来た家族のかた達も、不思議な事に手放して喜んではいないんです。

事務課長 そんな事はないだろう、え君 酷い嵐が過ぎ去って皆 その実感がわかんのだろう 私なんかやっと家に帰れるよ

雑用係 そういえば…

職員C   なんですか?

雑用係  独りだけ すがすがしい笑顔の方がいらっしゃいました あれはたしか中尾さんとか言ってましたが、皆さんにお世話になりましたとお饅頭を配ってとても嬉しそうでしたよ 

事務課長 中尾さんといえば む…亡くなった…