灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

2009-07-01から1ヶ月間の記事一覧

冷たい夏

太陽を月が食べた夏 瀕死の太陽は雲の中で安静にしている 大地には雨が降りそそぎ 山は崩れ 川は氾濫した 暑い夏はどこに行った エアコンとビールで凌ぐ あの茹だる様な暑さは どこに行ったのだ 夏祭りの神輿も 花火大会も冴えないまま 水着を着る事もなく …

天気図

皆既日蝕の日 ボクはトカゲと和解した 夕暮れはもうそこまで迫っていた 薄汚れた陣羽織の襟を立て 両切りタバコに火を付けた 煙の中に浮かんだ過去は 興業に失敗したシネマの早回しのように 奇妙なストロークで消失した たとえ君がボクのシナプスを 巧妙に繋…

カクテル

どう待ち伏せをするかを 私とブブカ族の軍師は話し合った 約束の時を過ぎても 川は流れ続けていた 薬局で貰った薬 その裏面の注意事項に 書かれていたのだ ゲームに参加するのは自由ですが 誰かの賞賛を期待してはいけません ここにはセンチメンタルなナルシ…

暖かな居間で アタイは夢を見る 悲しい事に 人間たちは みな少し歪んでいる そしてみな棘を持っている そしてその事で 苦しんでみたりもする 犬のアタイは 両親の顔さえ知らない ただその日その日を 素直に生きる それ以外の術はない 考える脳もない 物をも…

はかり

この世とあの世を隔てる川 その川の向こうには案内所があって そこには一台のはかりが置かれている 川を渡ってきた人は誰もが素裸で口もきけないから 一人ずつ網羅に手をひかれてそのはかりにのる そのはかりはあなたの魂の重さを量るのだ どんなにごまかし…

今日からボクは 6

持って帰った野菜は暑さに弱い物はすぐに冷蔵庫に入れる 荷台の上の野菜をその日の仕分け表に従ってそれぞれの学校ごとにパレットの上に分けてゆく 学校はそれぞれ生徒の人数が違う 多いところでは1000名を超えるし 少ないところでは200名に満たない…

祭りの後

この街に生まれ育ったボクは 周辺に漂う侘しい鄙びた雰囲気を感じ取っていた それは斜陽へ向かう製鉄所の年老いてゆく男の悲哀とも違う 此の頃やっとその侘しさの正体が分かりかけてきた それはこのあたり一帯を一世風靡した黒ダイヤ帝国の名残だったのだ 地…

今日からボクは 5

考えてみればこの会社も変わっている 従業員は5人なのか7人なのか定かでない。というのはそのほとんどが兼業しているのだ 年老いた女社長にしてからが本業のほかに夜は手料理を出す 居酒屋を経営してる クータと呼ばれる賑やかなおじさんは他人の家に出来…