この街に生まれ育ったボクは
周辺に漂う侘しい鄙びた雰囲気を感じ取っていた
それは斜陽へ向かう製鉄所の年老いてゆく男の悲哀とも違う
此の頃やっとその侘しさの正体が分かりかけてきた
それはこのあたり一帯を一世風靡した黒ダイヤ帝国の名残だったのだ
地の底に封じ込められた祭りの寂寞とした喪失感
目を閉じて耳をすませば
今はもう雑草に覆われた荒れ地の底から
人々の阿鼻叫喚が微かに聞こえる
時は過ぎ時代は移ろっても
大地に刻まれたツルハシの音は
人々の心の奥深い所に
今も木霊している
そしてその気高い音に気付いた者が
朽ちた廃墟を訪ねる
そうやって時代はバトンを受け継いでゆく