君の言ってる事は判る
私もこの戦争は長くは続かないと思っている。
落盤で出来た暗闇の中で中佐はゆっくりと話し始めた。
ふう・・ボクはこう見えても立教ボーイだからね・・ふふ
どこかを怪我したのか話の途中にうめき声が混ざる。
だからと言って何が出来るんだ。
うっ・・・今は国民総出で戦争と言う盆踊りを踊っているんだ。
鳴り響く笛や太鼓人々の歓声!
くっ・・・それに抗って君は独り道を説けると言うのかね
皆内心不安に思っている
だからこそその不安を払しょくする為にも全てを忘れて踊るんだよ
うっ・・・
中佐殿!
大丈夫ですか!?
時代と言う大きな流れの中では抗ってみても仕方がない
うっ・・・
どんなに嫌でも流されてゆくしかないんだよ
流されながらも うっ!せ!せめてクリヤーな覚めた目で
見届けようこの流れの逝く末を
そうする事が個々に出来るせめてものささやかな抵抗だ・・・
不意に中佐の声が途切れて辺りを闇と沈黙が覆った
中佐殿!中佐殿!
誠は闇の中を手を伸ばして中佐の堅い軍服を揺すった。
次第に溜まって来る出水に浸かりながら口元に手を当てる
呼気の反応がない・・・
中佐は既に事切れていた。
(長い小説の中の一節抜粋)