灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

何が欲しいのだろう


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一体自分は何が欲しいのだろう?
洋造は川面に映る自分自身の影に問いかけてみる
金か?
人の羨む肩書きか?

どちらかと言えば金だろう
では何故金が欲しいのか
洋造はてくてく歩きながら考えてみる
楽がしたいのか
贅沢がしたいのか
では何故金が欲しいのだろう
う~ん
一つは自分を頼りに生きている妻を心配させない為に
踏切が鳴り遮断機が下りる
洋造は目の前を通り過ぎる電車の窓を見る
やがて遮断機が上がり洋造はまた歩きはじめる

今日も朝早くから良く働いた
寒い一日だった
間もなく日が暮れる
自分は何が欲しいのだろう

強いてあげるなら
それは自由かもしれない
西行のように
山頭火のように
この世を彷徨ってみたい
その為にこうやって車に乗らずに歩いている
いつか
今こうして歩いているこの道がメキシコのカンクンの海岸沿いの道に変わる
或いはウガンダビクトリア湖の見える道に変わる
痛む足を引き摺りながら
背中に背負ったザックの中には寝袋と愛用の安いカメラ
薄汚れたチノパンには僅かな金しかなくても
私にはきっと心地よいに違いない
いつの日かそんな生活が叶う事を
強く思いながら黙々と生業をこなしてゆく