灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

no10 夢の続き

スーザンは所謂(いわゆる)男好きのする女で、自転車の後ろに乗せて松江を出発したものの福岡までの道のりのありとあらゆる所で見知らぬ男がちょっかいを出してくる。
それは若い学生だったり、土方の親父だったりよくもまあこんなに揃いもそろってと言いたくなるほど男を惹きつける。
もちろん夢の話なのだが…たとえ夢の中でもこういう女を連れて歩くと結構くたびれる。
持って生まれた天性の素質なのだから本人に悪気がなくても始終トラブルに巻き込まれるのだ。
尻が痛いと言うから嫌がるのを無理やりはぐって見てみたら尾?骨のあたりが赤く腫れている。
ひなびた商店街のタバコ屋のオバンが座っていた座布団を500円で買って二つに折って荷台にくびり付けると幾分楽になったのか鼻歌を歌っている。
益田を過ぎたあたりで日が暮れたが、所持金も残り少ないしかといって野宿と言うわけにもいかないし…。
そう思っていたら、泊まっていきなっせ 見知らぬ老人が声を掛けてきた。
眼にはお決まりの淫靡な色が揺らめいている。
はてさてどうするか!?

そこで目が覚めた。

時計の針は午前三時を少し廻っている。
そろそろ行かなくてはと床を出て身支度を始める。
外へ出てみると前日の予報どうりに氷点下の冷え込みで車のフロントガラスはびっしりと氷に覆われている。

若戸大橋までの道のりは道路も凍結しておらず、いつもどうりの走行だった。
途中追い抜いて行ったクロベェの2tダンプ快調に飛ばしていた。

大橋に入っても登りの道はいつも道理で凍結してなかった。
橋の頂上を過ぎて下りに入ったところで車を制御できなくなった。
滑り始めると何かにぶつかるまで止まれない。
側壁に二度三度ぶつかったところで、トラックは回転し進行方向に後部を向けたまま止まった。
切り返して進行方向を向こうとするけど道路幅とトラックの全長が50センチ程しか差がなくてうまくいかない。
そのままバックでそろそろと坂を下ってゆくと、うす暗い照明の中で進行方向に二台の車が止まっているのが見えた。しかも一台は横を向いているそろそろ近付いてゆくと、横を向いているのはクロベェのダンプだった。
側壁に激しくぶつかったのかサイドウインドウは粉々に砕け ドアも大きく変形している。
車から降りて話していると一台の白い軽がスリップしてダンプの脇に突っ込んだ。
危うくクロベェは潰されるところだった。
何やってんのよ 道の真ん中で!
軽からは眼を釣り上げてスーザンによく似た女が降りてきた。

そんな風にして夢の続きの慌ただしい一日がはじまった。
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