灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

桃太郎と鬼

皆さんを成敗するために来ました
島に上陸してから桃太郎は大きな声でそう言った
鬼が島の住人達は驚いて振り返った
そして笑った
成敗を口にするにはあまりにもひ弱で育ちのよさそうな少年が
キジと犬と猿のぬいぐるみを背中に結び付けて立っていたから
鬼は子供でさえ2mはあるのにその少年ときたら120センチたらずだったから

悪い事言わねえから痛い目会う前にうちさ帰れ!



てっきりそうなると思っていたのに・・・

現実は全く違っていた
海の上から見える鬼が島は何やらお祭りの最中のようだ。

桃太郎の小舟が岸に着くや否や
待ち構えた報道陣のフラッシュが一斉に焚かれた
今桃太郎さんの乗ったボートが浜に付きました。
アナウンスの声が聞こえる
鬼界幼稚園のかわいい角を生やした園児達がちぎれんばかりに旗を振って笑顔のお出迎えをしています。
鬼界西小学校の鼓笛隊がここぞとばかりに一斉に歓迎の曲を演奏しています。
祝砲が打ち上げられ、浜に集まった沢山の鬼達はスマホやデジカメで桃太郎の写真を撮っています。
鬼達の作った歓迎のアーチの中を大歓声に戸惑いながら案内されるままに歩く桃太郎
舞い散る紙吹雪と拍手でもみくちゃにされながらステージに上がる桃太郎
村長以下ズラリと並んだ島のお偉い方々が一斉に笑顔と拍手で迎えます。
満面の笑顔の赤鬼村長をはじめ赤鬼、青鬼、黒鬼、黄鬼、と偉い鬼達に求められるままに握手を交わしました。

ステージの中央に設けられた豪華な席に着いた桃太郎に次々と労いと感謝の祝辞が述べられます。
沢山の祝電が披露され、この日の為に修練を重ねた踊りや歌が次々と披露されます。
夜は夜で盛大な宴の席が設けられ,呑めや歌えのドンチャン騒ぎ若い娘鬼達に囲まれて桃太郎は夢見心地です。

盛大な見送りを受け、小舟に積みきれない程の宝を積んで鬼が島を出た桃太郎は広い大海原でふと思います。
鬼達もなかなかいい奴等じゃないか…

あれ!!・・・・なんかちがうな????・・・