灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

no2

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 それから1時間くらい一基一基 丹念に墓標を調べて廻った。
R氏はどうしてもその墓を見つけたかった。
おぼろげな記憶を頼りに陽が西の空に傾いた頃 漸くその墓を見つけた。
ちっぽけな古びた墓だったが、向き合って立つと往時の光景が目の当たりに浮かんできて、思わず胸があっくなった。
 耕さんやっとここへ来る事が出来ました
R氏は心の中でそう呟いた。
 お前変わりないか、順子さんは元気か?
そんな声が聞こえてきた様な気がした。
皆日々の生活に追われ生きる事に一生懸命で、過去を振り返る余裕がない。
それでも齷齪した人生の行きつく先が皆押し並べて此の墓標を刻んだ石の下であるのなら、そしてその事を皆がはっきりと自覚したならもっといい人生が送れるのかもしれない
夕陽を浴びたR氏はその墓の前に佇み静かにてをあわせるのだった。