灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

no5 辺境にて


ここからは地球は見えない
この惑星がどこにあるのかも皆目見当がつかない
十代の半ばに攫われてこの監視台(我々は檻と呼んでいる)でずっと捉われているのだ
どの位時が流れたのだろうそれは今の私には皆目見当がつかない
私のように地球から捉われてきた仲間がほぼ1光年おきに設置された檻に
十名ずつ恐らく千人近くは居るのだろう 
超新星の爆発で7名が死んだ時やってきたボスパニア星人の口ぶりからなんとなくわかった
監視台と言っても別に働いている訳ではない
昔炭坑にカナリヤを持って入ったように目前の星団が発する宇宙線の数量を検出するためのモルモットとして監視台の中で生かされているのかもしれない。
食事は繋がれたチューブで自動的に体内に注入される。
我々は目の前の星団を眺めながら既に数え切れないほど話した身の上話をまた始める
「おれの故国 日本には富士山があってさ…」