灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

no8  ランダムな人生

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D氏は今一つの映画を観終わった
なかなかいい映画だったので誰も席を立とうとしない
D氏はシートに凭れたまま人生について考えてみる
戦争は多くの人々の人生を取り返しのつかぬ程狂わせたのだろう
その余韻の残ったまま家に帰り録画していた大河ドラマのno1を見て
そのあとビートたけしの鬼畜をみていたら、
その合間に次男から従業員が辞めて死ぬほど忙しいと喘ぐような電話がかかる

子供の頃 トンボを捕まえては胴を千切って枯れ枝を差し込んで逃がしていた男は電車にひかれて二つに千切れて死んだ
D氏は考える 果たして罰が当たったのだろうか?
でもこんな例もある 知人の父親は神社の世話役をしていてその帰りに酒酔い運転のバイクにはね飛ばされて死んだ。
ずっと昔は悪い事さえしなければ幸せな人生が送れると信じていた
だけどこの歳になると人生がそうたやすく一筋縄でいくものではないと分かって来た
何事もなく平穏な人生を送るものはたまたま運が良かっただけだろう
不幸に見舞われる者もまた運が悪かっただけだろう
行い清く慎ましく信心深く暮らしていても癌になって苦しみぬいて死んだ人もいる。
戦争ともなれば国の為に罪もない人々を殺めることになる
考えれば考えるほど辻褄が合わなくなる
慎み深い生活の代償はなんだろう?
D氏は考えてみる 慎み深いと言う事の中にある種の驕りと甘えの臭いがする
これさえ守っていればうまく行く
そんなありがたい魔法の杖はないだろう
ランダムこそが人生の真の姿だろう
一寸先は闇それもまた真実なら因果応報もまた真実である
大雑把ないい方をすれば,森の中で裸で暮らしていた頃と何も変わらない、
油断してはいけない常に必死に生き延びるために知恵を働かせ、
必死に今日を生き延びる獲物を探さなければ野たれ死ぬだけだ 
そうやって懸命に生きていても
そのあいだ予期せぬ不幸やまた時には幸せも降りかかる
それはそれで仕方がない 何もなくても最後はヨレヨレの骸になり果てるのだから

だからこそ

せめて生きてる間は明るく優しく 
ああ!あなたのそばで生きれて本当に良かったと
周囲のものを愛したいとそう思うのであった