灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

衝動

今こそしなければという強い思いが
心を突き上げてくることがある

この果てしなく続く列の先が
おぼろげながら見えた時

切実だが難解な問題の本質が
束の間心をよぎってゆく

そんな時私はこぶしを握る
そしてタメ息をつく

でもすぐに私は
怠惰の羽毛に包まれる

このままが一番楽なのだ
何も見なかったことにしょう

それはちょうど
草を食んでいたインパラが
猛獣の気配を感じた時に似ている

彼はこうべを持ち上げ
耳を澄ませ辺りを睥睨する

そんな筈はないと
草を食み続ける

逃げるには今しかない
何かをやるなら今しかない

握りしめた決意は
みるみる翻意へと変質し

さらさらさらさら
砂時計の砂のように
手応えもなく消えてゆく

それでも尚
私は演じなければならない

この時という容赦なき舞台の上で
最も手ごわい自分自身を相手に

日常というディティールにまみれながら
納得のいく人生という演目を

台本おろか
観客すらなく…