灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

今日からボクは 2

失職してホームレスとなって施設のお世話になってボクの中で変わったものがある
それは生き方根本に関する変化だった それまでのボクは働く事に毎日毎日働ける事に感謝などしてなかった。
いかに人より楽をして金を沢山もらうかその事に尽きた
だが突然解雇されて住むところを失い 家族とも離れ離れになって数えきれない程の涙の夜を迎えた そして流した涙の数だけボクの心境は変化していった
今のボクはどんな仕事でも働けたならそれはとてもいい事だと思うようになっていた
働くことには職種を越えて報酬の額を越えてある種の救いがあるように思われた
分かりやすく言うなら贅沢は言えないのである
まともな仕事ならどんな仕事でも仕事がない事に比べたらそれはそれは幸せなことである

最初の一か月は朝早いのと重いものを持つのに慣れてなくてあっという間に過ぎた
ボクはまだ見習い期間中で黒さんという名のボクよりひと回り年上の上司に付けられてる
朝5時半に自転車に乗って出社すると既にシャッターは開いていて黒さんは事務所の机に向かって何か計算をしている
「おはようございます!」「ああ おはよう 十分後に出るからごみ出しとトラックの準備を頼むよ」
「了解しました」
そんな具合に朝は始まる ボクが運転をして黒さんが横に乗り二tトラックで隣町の青果市場までその日の野菜を取りに行くのだ トラックは古くてパワステなんてものは付いてない 
「物事はすべからく習うより慣れろだからね」黒さんの云う通り二週間もすればボクはなんとか支障なく運転できるようになっていた
市場に行く途中大きな橋を渡る そこの景色が素晴らしかった