灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

追ってくる


祖父が原因不明の病に倒れた時
いく日も高熱は続いた
医者が今晩がヤマ場といった日の真夜中
徹夜続きの祖母は朦朧とした意識の中で
襖から襖へ骸骨がガタガタガタと音を立てて
走ってゆくのを見た
それを境に祖父の病は快方に向かった

そんな馬鹿なことがあるものか
父がその話をするたびに
ボクらは笑った

その父もなくなり
数年が過ぎた
ボクの家族は引っ越すことになり
日も暮れて荷を積んだ最後のトラックがゆっくりと動き始めた
ボクは一人荷台に座り長年住んだ家が小さくなってゆくのを見ていた
その時仄白い何かが門から走り出てきた
ガタガタガタガタ
それは一体の古い骸骨で
ガタガタガタガタ・・・と
トラックの後を追ってきた

次第に小さくなってゆく
その姿を眺めながら
ボクは怖さというより
懐かしさに似た感情に包まれた
やがてトラックはスピードをあげ
その姿は闇の中に見えなくなった

いまでも時折思い出す

あいつは今頃どうしているのだろう
きちんと飯を食っているのだろうか