灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

羊たちの会話


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ねぇねぇどおして
羊飼いは狼から羊を守るの

優しいから?


違うよ坊や
それはね
羊を誰にも渡さないで
独り占めするためさ

じゃ狼はどうして
羊を襲うの?

悪者なの?

狼は悪者なんかじゃないよ

ただ腹が減っているだけさ

質問はそれくらいにして
ほら鐘が鳴ったぞぃ
そろそろ牧場へ
帰る時間じゃ

可愛い子羊くん

野蛮な狼に食べれれる位なら
優しい羊飼いに
食べてもらおう

密かに心に決めた
坊やでした

ほうそうかい
お前もいっちょ前の大人になつたのう!
家族はそう言って喜びました




その夜
二匹の羊が曳かれていきました
あくる朝
そのことに誰もが気づきました
そして誰もが知らないふりをしていました



(考えたって仕方ないさ
今日一日精一杯草を食って
楽しく暮らしていよう)

(そうさここにいれば
狼に喰われる心配はないんだからな)


自然に戻って
びくびく暮らすより
のんびり草を食んで
昼寝して鐘がなったら牧舎に戻るが楽だよ
運悪くおよびがかかれば
静かに肉屋に並ぶ
そのほうが
性にあってる
だってオラたち
家畜だもんな
そうだべ
そうだべ
薄汚い
野良公とは
違うだべ


柵の向には
痩せさらばえた狼が
静かに立っていました

その目の輝きは
羊たちには
強すぎました


だから
誰もが見ないふりをして
草を食んでました

とさ…。