灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

おまえに

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おまえに出会ったのは
8年前の夏の終わりの日
ひどい台風が通り過ぎた後の公園
捨てられた毛布のように
ウォーキングコースの脇に蹲っていた
それが犬だと判ったのは3周目
抱き上げると薄眼を開けて初対面
空腹と暑さで伸びているのかぐったりしている
首には❤の透かしの入った可愛い首輪
少しだけ餌をやり早く飼い主に会えるといいねと
そのままにして帰った
それでも次の日気になって探しに行くと
ぼろ毛布の様な姿で木の根っこに蹲っている
スーと二人で会社に連れてかえり
長い毛を刈って丸坊主にしたら
ようやく元気を取り戻した
あちこちに張り紙をして
元の飼い主が見つかるまでの間預かるつもりだったのに

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とうとうあれから8年経ったね
その間雨の日も晴れの日もずっと一緒だったね
人に吠えたのはただの一度もない
吠える相手は猫ばかり
それも悲鳴のような吠え方をして猫には完全に舐められていたね
おまえは気持ちの優しい犬だから
周囲の者は皆その優しいオーラにずっと癒されてきた
その優しい仕草や屈託のない寛ぎ方を見ると思わず口元が綻んだものだよ
それでも雷や花火が鳴ると全く違う犬になって暴れたね

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毎日毎日私のお供で森の中を5キロも10キロも歩いたね
犬は自然にが私の方針だったから
自慢の栗色の長い毛はいつも薄汚れて季節の種や実が絡まっていた
たまに洗われると毛づやは戻り黄金色に輝き神々しくさえあった
人見知りしないで誰にでも懐いたからそのオーラに子供がすぐに寄って来た
可愛い!ねぇおいちゃん ちょっと触らして
町の中を歩くとそのたび毎に撫でられたり抱えられたり大変だったね
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いま私の傍らで静かに寝息を立てているおまえ
二日前に事故にあいそれは軽い打ち身ですんだのに
その時の検査で劇症肝炎と診断されたおまえ
今は毎日朝病院に行き夕方まで点滴を受ける日々
おまえの寝顔を見ながらこの8年の事を思い出していた
世話をしてきたのは私だが世話をされていたのは私かもしれない…
ふとそんな思いが心に過る
すがたかたちは違うけれど、同じ言葉は話せないけれど
どこか心の深い所で透明な絆で繋がっていた
私のかけがえのないパートナーだよ
早く元気になっておくれ
大切ないとしい リコ
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