灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

風景

 
 
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不思議な事に
屠殺場へ向かう時にも
順番に並んでみたりする
 
列を乱すものには
誰もが眉を顰める
 
事態が尋常でない事を知るのは
次に自分が殺される時
前の男の絞るような悲鳴を聞いたその刹那
扉を開けると
眼前に広がる血糊 転がる首
それでも逃げることなど考えもせず
奥歯と肢は震えているのに
心は針をすでに振り切ってしまったのか
妙に落ち着き
前の奴と違うどんな悲鳴を上げるか
無意識のうちにも少し躊躇う
そして促されるままに跪く
首を差し出す最後の瞬間に
我に返り
少しだけ頬を濡らす
これはいったい…なんなんだ
突然沸いた疑問から目を逸らすため
Vサインなんかしながら
強張った笑みに顔を歪め
こんなもんだと
嘯いてみる
 
動物なら外面等お構いなしに
渾身の力で生き延びようともがくのに
 
なまじ知恵があるばかりに
その場を繕うことばかり考えて
大切な事は何も見えていない
おまえも同じさ!