満月の凍てつく夜
オホーツクの森の外れで
とらばさみにかかった銀狐が一匹
白い雪を真紅に染めて
静かにもがいている
やがて諦めたのか
身を伏せて月を見上げる
そして哀しげに一声哭く
クオ~~ん
あすは老練な猟師の手で
毛皮になるのだろう
森には家族もあったろうに
あの哭き声が今でも
耳の奥に残っている
月明かりに照らされた
彼の面影が心の奥に痣のようにある
思えばあの狐は
私自身だろう
あなた自身だろう
見えないトラバサミの痛みに
そっと足首を摩ってみる
Photographer Hiroki Wakabayashi さんより拝借いたしました。