灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

ゴング

世界は
11ラウンドのボクサーのように
全てに倦んでいた
のろのろとステップを踏み
惰性の拳を振り回す
自らのまき散らす
臭い吐息とぬるぬるとした汗にまみれ
朦朧とした意識の中で
相手を見失い
ゴングに救いを求めていた
このままでは勝てない事を
誰もがとうの昔に思い知らされていた
ここをどうにかしのいでも
劇的な何かの兆しは
どこにも欠片もなかった

そもそも相手などいたのだろうか
あいて?あいってなあに
壮大なるイリュージョン
共同幻想の堂々巡り

この裸猿の群れもまた
恐竜のように
消え去る事でしか
足跡を残せない
ルーペを覗きながら
そいつは呟く
自らの毒で
滅びたんだと

ゴングが鳴れば
最終ラウンドが始まる
自分自身を相手に
決着をつける時が来る
だらしのない
品のない
無様な闘いは終わる
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