灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

店じまい

店じまいの時が近付いている
男を取り囲む全ての事象がそれを告げていた
長い生業の中で血肉の一部となった習慣がそれにあらがう
けれど潮時はもうそこまで来ている
先延ばしにしたところでどうなるものでもない
男はゆっくりと口角をつりあげてみる
鏡には寂しげな年老いた男の顔が写っていた
無理に作った笑顔は自身でさえそれと分からない

いろいろありまして
いや色々ありましたかな

ともかくこういうことになりました
鏡の自分に向かってそういった男は困って頭をかいた
そこには笑顔浮かべた自分が写っていた
装いは変わろうと、恥を晒そうと

ともかくは歩き続けねばなるまい
歩けなくなるその日まで