灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

オババ

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ほんにおおきに すまんかったね
お茶が入りましたけ どうぞここにすわらんね

建具の調整を終えたボクにオババは座布団を勧めた
どうぞ
差し出されたのは先程まで仏壇にお供えしていたおはぎである
確か 大きな銀バエガタカっていた
若いもんは遠慮せんで食べナッシャイ
はあ…いえあの
どうしたんね~うまかよ
ぼた餅ば嫌いね
そういってオババは悲しげに笑った
いえそういうわけでは…
意を決して手を伸ばそうとすると
やばい!
先程のあの小指の先ほどもある銀バエが
ゆうゆうとおはぎの上を這いまわっている
目が悪いのかオババには見えてないようだ

これは話題を変えなきゃ…
ところでおばあちゃん
若い時はさぞやいい女でしたでしょう
はあ!
耳が遠いのか間の抜けた返事をする

若い時はよかおなごやったろ

はあ まあうれしかごといわしゃるね ちょっと待ちやい
そう言うとオババはひょいと立ちあがり
部屋の隅のみずやから何かを取り出してきた

それは緑色のおせんべいのカンカンだった
オババはフム!と力をこめてそれを開けると
ぼくに背を向けて何やらぶつぶつ言ってる
何かを背後に隠して恥ずかしそうに笑った
あんたがそこまでいうならしかたなか
誰にも見せたことのなかばってん
あんたには見せとこたい

しわくちゃの手で差し出したのは一枚のセピア色の写真だった

驚いた

その写真をみてぼくの心拍数はロックのように打ち始めた
ぼくの驚いた様子に満足しながら
オババは茶を継ぎ足した
それは女学校を出たころたい
どげんね~よかおなごじゃろがね
ぼくは返す言葉がなくて
思わずおはぎを口に入れていた

歳月の怖ろしさを
思い知らされた若き日であった
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ps数日後
親方に呼び止められた
オマエあの婆さんとこに行ったそうやの
ええ!?
嘘も百回言えば本当になるち言うが
あのばあさん 柳原白蓮の写真を見せたか?
……。

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