その猫は大きな自然公園に住み着いていた
夕刻になると年老いた夫婦が軽自動車で餌を運んでくる
猫は多い時には20匹位いた
夫婦はそれが生き甲斐だったから、猫の為に僅かな年金を惜しげもなく使った
夫婦は駐車場に着くとクラクションを鳴らす
それを合図に猫は集まってくるのだ
キャットフードを食べない猫もいて刺身やささみを貰っていた
ある時急にお爺さんの姿が見えなくなった
それでもお婆さんはいつもの時間にやってきて大声で猫の名を呼び餌を与えていた
もちろんお爺さんはどうしたの?とは猫は聞かないしお婆さんも話さない
ただ私にはお婆さんはひどく疲れて見えた
或る日 いつもより豪勢な餌が与えられていた
その日を境いにおばあさんの姿は公園から消えた
猫は何日もお婆さんが来る時刻になると待っていた
秋が過ぎ冬になるとその数は減った
長い冬が終わったときには この猫だけが待ち続けていた
けれどももう老婆が来ることはなかった
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