灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

てん(天アルイハ転)

見よ!
三羽の鳥の率いた
蝶の群れは
天空を弧を描いて
墜ちてゆく

鬼蜘蛛達が
密かに仕掛けた網に
引率する鳩がかかった
蜘蛛達の狙いは
後尾をゆく老練な鶹
針金の罠で絡め捕る
もがく鶹
地表には
いつの間にか
這い出た蟻地獄達が
密かに歓声をあげる

啄木鳥に率いられた
蝶の群れは
その脇をすり抜けて
地表すれすれに
逃れる
降り注ぐ夥しい麟粉
蟻達の心に突き刺さる

あれは蛾の群れにすぎなかったと
蝉や蛙は忙しく鳴き続ける
彼らを食べる鶹は
もう捕まった
失望した蟻たちは解散し
また齷齪とした
毎日が始まる
でっぷりとした腹を擦りながら
蟻地獄はまた
活動をはじめる

いつの日か
逃れた蝶たちが
屈強な鳥達に変身して
再びこの地に舞い戻るまで
病んだ禿げ鷲に従属するこの森に
また次の千年が訪れる