灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

物語れない

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導火線をくわえた猫は
闇の中を疾走する
そして人々は
終点のない汽車に
乗っている
窓の外の景色は
昨晩ペンキで
描いたもの
勢いのよい
水流は
蛇口と地面を
繋げる

もう出てきてもいいよ

薬局で貰った薬には
他人の名前が
セシュウムの半減期
残された寿命より
ほんの少し長い
わけもなく
傍らの犬を抱き締める
見知らぬ犬を

そして
物語れない
物語は既に
始まっている

全てを包括して
それでも 
なお!

怨嗟も懺悔も
ない

ただ
クラゲのような
とりとめのない
従順な群

静かに
その時を
待っている
自覚することも

なく