灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

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可愛がってくれた人が
誰も居なくなった後で
人は死を迎える
若輩たちに囲まれて
トボトボと旅立ってゆく

あんたにもいい時があったんだよね
燃えるような恋もあったし
奇跡のような幸運も
思い出したくないような不運もあった

灰色のロバの背に乗り
トボトボ環っていこう
この世の事は
どうせたかが知れている
長閑な田園をユラユラと行くような日もあれば
屠殺場にひかれてゆく牛の背のようなやりきれない日もある

それでも誰もが片道切符で
行き先は知っていても
何処を通るのか
皆目見当もつかない
晴れた空の奥には
漆黒の闇が控えている
言葉は無力で歳月は非情
人の欲望には限りがなく
愛することなど覚束無い
そうさ愚かな自分にやっと気がついたね

隣にいる誰かを
なんにも言わずに
抱き締めることからはじめよう
馬鹿は馬鹿なりに
巧妙には立ち回れないけど
それでもいい
沢山の涙に囲まれ
イイ人生だったとぼそりと言えるように
あったかく生きてやれ