灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

修羅の群れ

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満員電車に揺られて学校へ
授業中にメール打って
昨夜のあらしの話をする
気になるあの子も大切だけど
それでもあの震災の日の
人々の叫び声は
生々しく蘇る

適当に家事を済ませて
ママ友と昼レスでランチ
他愛ない話に花が咲く
あら素敵ね その服どうしたの
そうなのよ 割と安かったのよ
けれど放射性物質と聞くと
目尻が上がってしまう
子供にだけは・・・

今月のノルマを気にしながら
得意先周り
ペコペコ頭を下げながら
それでも仕事があるだけマシだと思う
昼食に買った弁当のお釣りを
今日もまた募金箱に入れる
なけなしの財布をはたいて
被災地の事を心配する

限られた年金を受取りながら
もう10歳若ければ・・・
ボランティアでもするのにと
長く生きてりゃ
見なくていいもんも
みなきゃならんな
神経痛で痛む足を引摺りながら
公園を後にする

人を騙す阿漕なクズのオレでさえ
避難所の人達の為なら
似合わないけど
何かしなければと思う
事務所のエアコンは抜いてある
人の道など無縁で来たが
心の疼きは誤魔化せない

 
それでも
日々が過ぎるごとに
時が経つごとに
怠惰な日常に
戻ってゆく


まだまだ
苦しんでいる
人達が
大勢いるというのに
あれがオレでなくてよかった
私には起こらないわよ
心の中の傷は
かさぶたにおおわれ
この状況に
もう慣れ始めている

いつまでもそこにとどまって
弔うことをせず
遺ったものは
出発する
そうやって
生き延びてきた
私たち

ほら
痛みを忘れ
ゆっくりとまた
馬鹿笑いを
始める
修羅の群