灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

むし

 
 
猫の甘言にのって
めしいの容子はベットの下に入っていった
あれから三ヶ月
方々を探した五介はやっとその家にたどりついた
寝室の扉を開けると丸々と太ったごきぶりが一匹這い出してきた
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嫌な予感がして五介はベットの下を覘いてみた
暗がりの中で無数の何かが蠢いている
闇に目が慣れてくると人の体の形にびっしりと覆い被さる虫虫…虫
背筋に走る悪寒に耐えながら腹ばいの五介は手で払った
ざざっざざっと右往左往するグロテスクな虫の下から半分喰われた容子の裸身が姿を現した
虫たちの無数の歯型と唾液に塗れ半分溶けかけた容子はそれでも静かに笑っていた
払っても払っても虫たちはざわざわと蠢いて容子の体を覆った
五介は半狂乱に叫びながらそれでもいっときの間手足を動かしていたが
それもやがて虫に覆われて見えなくなった
通りで猫は次の獲物を探していた
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