灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

2人のサンタ

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クリスマスイブの日サンタクロース達は忙しそうに
そりに荷物を積み込んでいました
そこにはダボダボのサンタ服を着て積み込みを手伝う男の姿がありました
「おや 新入りかね?」
他のサンタ達が声を掛けていきます
「ええ…一日助手を務めます」
白いひげを生やしたこのそりのサンタがやってきました
「さあ 全部積みこんだらトナカイに餌をやって出発じゃ」
世界中の子供たちに配るプレゼントを積んでサンタ達のそりは次々と出発してゆきます
「なんか悩んでるそうじゃがわしを手伝う事で答えが出ればいいがの…そりに乗ったらしっかりつかまってないとふりおとされるぞい」
そういったはしからもう落っこちそうになってサンタにしがみ付いてます
「はあ……ひぇ~~~」
「なんてドジな男なんじゃ~ まあいいさ ドジな奴に悪い奴はおらんからのう!」
「ひゃ~こわい~」
肩をすくめてぶるぶる震えています

 
サンタ達は割り当ての街に着くと煙突のある家は煙突から ない家は二階の窓や裏口から入って
子どもたちの枕もとに次々とプレゼントを置いてゆきます
「しーっ」「そっとそっと歩くんじゃ」
「どうじゃな 子どもたちの寝顔はどれも天使のようじゃろ」
「そうですね~中にはサンタさんへと手紙を書いてる子もいましたよ」
「そうじゃな あの子供たちもいい大人になってくれることをいのっておるんじゃよ」

 やがて最後のプレゼントになりました
小さな紅い屋根の家です
「さてと今年はプレゼントを配るのはこの子で最後 …」
サンタは言葉を切り ため息を一つつきました
「じゃがこの子にはこれが最後のクリスマスなんじゃよ」
「えっ!そうなんですか」
助手も驚いて立ち止まりました
「それもこの子の運命じゃ 誰にもどうする事も出来んのじゃ」
2人は裏口からそっと入りました
小さな女の子はぬいぐるみに囲まれベットの中でスヤスヤと寝ています
枕もとにプレゼントを置くと2人は女の子の顔を少しの間見つめました
目じりが熱くなるのをこらえて2人は部屋を出てゆきました

そりに向かって歩いている2人にドアの開く音が聞こえました
「シャンタさん…待って下さい!」
ふり返るとあの子の小さな影がそこにありました
「どうしたねおじょうちゃん」
後戻るとサンタは優しく話しかけました
「あっ!なんでシャンタさんが二人いるの!」
女の子は戻ってきた二人を見て目をまんまるにしています
「おどろかなくていいよ わしがサンタで彼は助手なんじゃよ」
「そうなんだ~ それではこのマフラーをシャンタさんの首に」
「おお、そうかね   ありがとうよ おじょうちゃん」
かがんだサンタの首に女の子は小さな紅いマフラーをかけました
「助手さんにはほっぺにキッスを」
かがんだ助手のほっぺに女の子は(チュッ!)キスをしました
「ありがとう!」
「さあ さあ 寒いからもうおはいり また来年うんとプレゼントを持ってくるからね」
「わ~い約束だよ!  シャンタさん 助手さんバイバイ!」
ふり返ると女の子の小さな影はいつまでも手を振っています
そりに乗った二人のホオを静かに涙が伝いました




「どうじゃね 一日助手をしてみて答えを見つける事が出来たかね?」
しばらくしてサンタは助手に話しかけました
「……」
「人間たちはドジなだけではないのかね」
その時夜空を行くそりに静かに教会の鐘が聞こえました
「おお クリスマスじゃな!メリークリスマス」
それだけ言うとサンタクロースは女の子に貰ったマフラーを外して助手の首にかけました
「………」
「女の子とわしからのプレゼントじゃよ 誕生日おめでとうキリストさん」
「ありがとうございます でもなんで私がキリストだと…?」
「さっき女の子がキスしたとき病気を治してくれたじゃろ、礼を云うのはわしの方じゃ来年もまたあの子に会えるのじゃからな」






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