灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

わしは風

ある日
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大きなガラス瓶の中に半分くらい貯まった百円玉
それを見ながら四郎は考える
毎日百円はいとも簡単 それでも積み重ねれば結構な額になる
ということは少しずつ積み重ねれば人の驚く様な事も出来るようになる筈じゃ
そう考えた四郎は朝のウォーキングの所要時間を毎日1分ずつ速くするようにした
毎日1分の短縮は苦も無く達成できた
 
みつきもたつと今まで2時間かかっていたウォーキングは30分で回れるようになった
けれども27分のあたりに壁が存在することが分かった
どんなに息を切らして早歩きしてもたまに27分を切れる日はあっても切れない日の方が多かった そんなことを繰り返しているうちに27分前後で歩く事は当たり前のようになった すれ違う人が皆 驚きの表情で四郎を見る
それは心地よい満足感を四郎にもたらした
 
そんなことを繰り返して一年ばかり経ったある日 四郎は走り始めた
走ればなんなく27分の壁をクリアすることが出来た。
足を触ると盛り上がった筋肉が鎧の様に足を覆っている
心肺機能も上がったのか息が切れる事もない
鼻歌を歌いながらかっては2時間近くかかっていた道のりを僅か15分くらいで駆け抜ける
 
おおなんということだ
糖尿病で高血圧で痛風で病院通いしていた昔が嘘のようだ
何故もっと早く気付かなかったんだ
風がこんなに心地よい風と同化して一体となって・・・
 
 
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78歳の四郎のラストランだった
戒名には走るの一字が加えられた事を追記しておこう