灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

突然

突然庭先に大きなトラックが止まって
○○さん荷物が届いています。
サインお願いします。
と作業服を着た年配の女性の声
差し出した紙には何やら英文で書いてある
化粧気のない女性の笑顔と実直な態度に妻はいつものごとくめくら判
すぐにアジア系の大きな男が三人降りてきてトラックのコンテナから庭先に轢いたブルーシートの上に段ボールを下ろし始める。
どの部屋に入れましょうか?冷凍物だから陽に当てるとすぐ溶けちゃいますよ
その間にも表の道路を塞いだトラックに抗議のクラクションが鳴る
え、えじゃこの部屋に…。妻が駐車場に面した6畳の部屋を指さすが早いか男たちはどやどやと玄関から部屋までブルーシートを敷き詰め、土足のままへや部屋の中のものを片づけ始めた。
ちょうどそこへ私が帰って来た。
一体何事?
御主人さまですか、荷物が届いています 今部屋に搬入中でして30分くらいで終わります。
品物は何ですか?
はい冷凍すり身20キロが100ケースと冷凍タラバ20杯入りが100ケースですよ
ちょっと待ってください 私どもはそんなもの頼んだ覚えはないんですけどね
そんなこと言われても我々は依頼があって運ぶだけですし、それにほらここに奥様のサインも貰ってますしね
その間にも表では立て続けにクラクションがなり、男たちはてきぱきと荷物を運びこんでゆく
ちょっと待って、本当にちょっとまってすり身やらカニやら心当たりは無いんですよ ちょっと本当にちょっと待ってくださいよ送り主は誰なんですか?
女の手にある伝票を奪い取ってみると英文で良く分からないがbestfoodという文字が辛うじて読める。
本当にちょっとまじやばいから作業を止めさせて ストップ!すとっぷ!ok!?
警察に電話しますよ
御主人私どもは依頼されて送るのが仕事ですから、それにここに受け取りのサインもありますから、
警察を呼んでもらっても困りますよ、もう終わりますしね そのあとで御主人が送り主と連絡取られてはいかがですか。女は笑顔で丁寧に答える。
なんでサインなんかしたんだと妻を責めてみてもはじまらない。
日頃からネットのオークションで競り落としたものが突然送られてくる事に妻は慣れてしまっている
既に30度を超える外気に溶け始めたのか辺りに水産物特有のにおいが漂い始める
あっもしもし折尾警察署ですか…
はいそうです。その声と荷を下ろし終えて冷凍コンテナの後ろ扉を閉める音がほぼ同時だった
どうされました何か事件ですか?
あの突然荷物が来てですね・・・その全く身に覚えがないのですが・・・
受け取りのサインはされましたか 
はあ あのう・・・横目に妻が作業の終わった男たちに麦茶を勧めているのが見える。
そうですかサインをされたのならひとまず受け取るしかないですな
そ、そんなあ
はよ!うごかさんか!仕事が出来んちいい寄ろうが!のんびりお茶でも飲みやがって
またクラクションがなってパワ原組の社長のどなり声が聞こえる
女はその声に促されて、皆にムーブ!と声をかけると笑顔を振りまいて庭から出て行った
ちょっと!ちょっと!おいまて!まて~!
とにかくですね・・・携帯の向こうから警察官の悠長な声が聞こえる 
ほら大きなカニよ!
発砲スチロールの一つを開けて妻が大きな赤いかにを手にとってかかげはしゃいだ声をだす。
 
ちょうどここで目が覚めた
夢だった・・・よかった
寝汗をぐっしょりかいていた
傍らでは妻がスヤスヤと寝息をたてている