灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

トートゥ

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はじめてトートゥを捕まえたのは人里離れた森の中だった
木陰でお弁当を食べている私を 奴はじっと見ていた
おにぎりを一つとウインナーをひとかけ分けてやると
どこまでも後をついてきた 

昔 祖母が言った言葉を思い出した
もし森でトートゥにあったら 食べ物はあげてもいいけど
決して 連れて帰るんじゃないよ トートゥはお前の大切なものを
食べてしまうからね
私は走った 重い登山靴とザックで何度も転びそうになりながら
山道を駆けて行った
やっとの思いで車まで戻り、汗を拭う間もなく車を発進させた
かわいいものには棘がある などと呟きながら~

一月ばかり経った頃
夜トートゥが台所の流しの上で残ったおかずを食べてた
ぼくと目が合うと少し後ろめたそうに下を向いた
仕方がないので飼うことにした

トートゥは今も私と暮らしている
私の大切なものをどこまで食べたのかはよくわからない
でも私は少なくとも孤独ではなくなった

ひょっとしたらトートゥが食べているのは
私の心なのかもしれない


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