その人は何一つ成さないけれど
出逢った者を皆優しい心で癒してゆく
人も犬も猫も花も木も
道端に落ちていたぬいぐるみさえ
必ず拾われ優しく抱かれる
その人はけっしてエラくはない
むしろ一番低いところを彷徨いていて
そして涙はまだ乾いていない
いつも何かにかまっている
何かに捉まっている
先を急ぐのは誰かにまかせて
脇に咲いた小さな花を愛でている
脇から見ればだらしなく
かっこ悪く汚らしく
見窄らしく風采の上がらない
老人かもしれないが
その絵も言われぬ柔らかな笑顔と
物腰に人は心を洗われる
その人は愛が静かに溢れているから
競うことなく衒うことなく
溢れる愛のままに歩いてゆく
寄り道だらけの非効率な毎日
そういうものでできている
なろうとしても
なれるものではないだろう
持って生まれた心のままに
いきてゆけば私にも私なりの
鈍い輝きをまとう日が来るかもしれない
だがその人はのそんなひまがあれば
傷ついたスズメを拾うだろう
柔らかな笑顔と優しい言葉で