灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

帰ろうか

ねえ 

妻は食器洗の手を止めて振り返った

あなたが助けたあのときの仔狸それが私よ

そう言って妻はスカートの後ろからかわいい尻尾を出してみせた

知っているよ

私もズボンの後ろからすっかり白くなった大きな尻尾を出して見せた

 

私は妻にニッコリ笑って囁いた

そろそろあの森へ

帰ろうか!?

ええ   いいわね

妻は微笑んで  また茶碗を洗い始めた

私はそっと尻尾をしまった

 

降り続く雨の音がする-