灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

かわらない

丘の上には風車がある
風がふいている
風がふいている
風がふいている

赤ん坊が生まれた朝も
婆さんが死んだ夜も
風車はまわっていた

季節が移ろい
渡り鳥たちは
遠い異国へ帰ってゆく

風がふいている
としの離れた夫が倒れた日も
スカートのすそを揺らして
風は通り過ぎてゆく

涙に濡れた目で
そんな風に見つめるのは
何人目だろう

風がふいている
風がふいている
なにもかわらない

変わらない風景の中で
すべてが少しずつ
変わってゆく
 
イメージ 1