灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

通夜の席で

94歳の伯父は絵を描く事が好きだった
大きな展覧会に入選した事もある
幼い頃アパートの三畳の部屋には
伯父の描いた九重の絵が飾ってあった

その伯父の訃報が今日届いた
通夜の式典が終わり
伯父の顔を従兄弟たちと並んでみていると
未亡人になったばかりの叔母が云った
とうとうあんたたちの伯父さんはいなくなったのよ
あんなに沢山いたのに
この人で最後なんやからよく顔を覚えておきなさい
その言葉に私たちは思わず手を合わせた
12人いた伯父たちがこれで見おさめか

死因は誤嚥だった
久々にみる伯父の顔はとても安らかで少し救われた気がした

そのあとでもう一人残っていた伯父に声を掛けられた
よお!元気にしてるかい

慶事でばかり顔を合わせていた時が過ぎると
やがて弔事出ばかり顔を合わせる様になる

これも世のならいだ
我が家では犬が死にかけている

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これもまた自然の掟だ