灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

そして私は犬を失くした

何も言えない奴だったけど
いつもじっと私を見ていた
嬉しい時も悲しい時も
いつも私の方を向いていた
私は良い飼い主ではなかったから
抱きしめてやることもしなかった
時たま気まぐれに荒々しく触るだけ
それでも嬉しそうに尾を振っていた

あの夏の日
ひどい雷の後で
私に拾われてから
どんなにひどい扱いをしても
いつも私をみてくれた
真っすぐな曇りのない目で
いつでも私のそばに寄り添っていてくれた
私がどん底を這いずり回っている時も
いつも私の傍らにいて
見えない長い舌で私の心を全身を
舐め続けてくれた

オマエガいてくれたおかげで
私はなんとか今日まで生き延びてきた
だのに最近はお前がそこにいる事を
当たり前の様に思い込み
粗末に扱っていた
そしてある日突然
オマエは消えた

そして私は犬を亡くした
一番そばにいて
言葉のいらない
裏切る事の意味さえ知らない
本当の心友をなくした

10年の間
ありがとう
楽しかったぜ!

もし生きとし生けるものが
輪廻をくりかえすなら

またどこかで
オマエに逢いたい

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