ある時 煩わしくなって
ぼくは自分の影を撒いた
影はうろたえて右往左往してぼくを探していた
ぼくは物陰からそれを見ていた
影は声をあげずにひとしきり泣き叫んだあと
トボトボとどこかへ行ってしまった
影のない毎日は新鮮だった
ぼくはふわふわとクラゲのように漂った
風のように気まぐれに遊びまわった
でもある日一人の女性から言われた
影のない人とは付き合えないわ
小さな子どもから言われた
おじさん一人ぼっちで可愛そう
老人は云った
死んだものには影がないんだぞう~
光を浴びるから影はできる
それはセットだったんだ
影を亡くしたあの日に
ぼくは光も失くしていたんだ
ぼくは影を探すたびに出た
誰かぼくの影を知りませんか
ぼくの影を見ませんでしたか
カラスが鳴いてぼくをわらった
影はおまえの後ろにちゃんとあるよ
振り返るといつの間にか影がいた
寄り添うように影がいた
やあ
やあ
またよろしくな!