灰色のロバ

地球が宙に浮いていること 誰もがそれを忘れている それでも時折不安になる

特別枠

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宝くじを買ったとき見知らぬ男が話しかけてきた
「たまには当たりたくないですか」
「そりゃ~当たりたいさ でもねそう簡単に当たらないんだなこれが~」
男はウインクしてついてくるように言った

男に連れられて入った珈琲ショップの中で男は声を潜めて言った
「あなたの決心一つでそのくじを当たりくじに変えることができるんですが・・・」
怪訝な顔をする私に男は奇想天外な話を始めた
「あなたもうすうす感じているとは思いますが世の中のものには全て裏があるんですよ」
「裏というと聞こえが悪いですが、まあその特別枠とでも申しましょうか そしてその今あなたが手にもっている宝くじも例外ではないのです」
呆気にとられている私に男は畳み掛けるように話を続けた。
「ところであなた 本当に宝くじに当たりたいですか?もちろん一等前後賞合わせて三億の話ですが」
「あんたひょっとして新しい手口のキャッチセールスかなんかでしょう」
「ぜんぜん!そんなモンと違いまっせ」男は苦笑いしながら顔の前で手を振ると急に関西弁になった
「あなた テレビなんかみてて不思議に思うことありませんか?」
「えっ 何がです?」
「たとえばですよ たとえば中東や南米で行われるサッカーの日本代表の試合になぜかしら応援に来ている人達がいることを」
「そういえば~」
「あれなんですよ あれがその今からお話するその特別枠公務員なんですがな」
「特別枠公務員?」
「そうです私どもの専門用語でステイツサポーター略してSSと呼んどります まあ早い話が国家のさくらでんな」
「さくら…そんな馬鹿な」私は信じられない話に苦笑いを浮かべた。
男は平然とした顔で話を続けた。
「スポーツの応援だけではありません、SSの仕事は多種多様おおよそ国が関わる行事にはすべてに関係しとるんですわ」
「あのう…その話がもし仮に本当だとしても何故そんなまどろっこしい事をするんですか人員が必要なら公務員で採用すればいいでしょうに」
「そこでんがな、あんたここが北朝鮮のような国ならサッカーの応援でも何でも美人ぞろいの公務員でいけまんがな そやけどここは日本でっせ そうやのうても公務員減らせ人件費減らせの大合唱でんがな」
「まあ仮にそれが本当の話としてどうやってそのSS達に給料を払ってるんですか?予算を計上できないから払えないのでは」
「そこでんがなそこ あんた世の中これだけ宝くじやlotoやtoto等くじはぎょうさんあるのに当たった人にお目にかかった事ありまっか?へんや思わしまへんか?」
「そういわれてみれば…」私自身を含めて周りの人間ももう何十年も宝くじを買い続けているのに当たったという話を聞かない、せいぜいあたっても末等か何千円止まりの下二ケタばかりだ」
「実はあれは殆どがSSに給料として支払われとるんやがな、表向きは宝くじ本当は秘密の人件費ですわ」
「そんな馬鹿な~」
「信じられんのも無理やあらしません、わてだって最初聞いた時は絶句したもんですわ」
「詳しいシステムについては言われませんが、あんたがその気があるのならどややってみる気はあらしまへんか?」
男の話ではSSになると10年に一回宝くじの一等賞金が給料として支払われるとのことだった。海外遠征などの諸経費はナンバーズの当たりでその都度支払われるらしい
「まあとにかくその気になったら、此処に電話してや」男は電話番号の走り書きした紙切れを手渡すと人ごみの中に消えていった。
私はあれからいまだに決心がつかないでいる 男の話を全部信じている訳ではないのだが…ただ一つかわったことはサッカーのテレビ中継を観ていても植樹祭のニュースを観ていてもその周りの観客に目が行ってしまうのだ…
それともう一つ あの日以来宝くじやLotoを一切買わなくなってしまった 男の話を信じている訳ではないのだが…。